本研究は予測モデルの課題であった計算パラメーターの不確実性について,伊勢湾で蓄積された詳細な観測データを用いて最適化を行ったうえで,計算結果から伊勢湾の生産構造を明らかとした.動物プランクトンの捕食量は夏季には100mgC/m2/dayを超えるなど,植物プランクトン等の被食者の現存量に与える影響(トップダウン効果)は大きい.また動物プランクトンへの転送経路として,大型の植物プランクトンから成るclassical-food webと小型の微生物から成るmicro-food webの比率は大よそ9:1であった.一方で貧酸素水塊の影響により動物プランクトンの捕食量は約2割減少しているものと推測された.腐食連鎖での生産者である好気性細菌の夏季の生産量は他の微生物と同程度と大きいが,動物プランクトン等の高次生物への転送量は小さいという特徴があった.