海岸堤防に対してこれまでにいくつかの粘り強い構造形式が提案されているが,堤体材料に着目した研究は少ない.例えば,設計外力を上回る津波の来襲により堤防表面の被覆工が流出しても堤体の粘り強さを確保するには,堤体盛土そのものの粘り強さの向上が求められる.そこで,セメントや粘土を混合した砂を用いて移動床水理模型実験を実施し,盛土材料による堤体の津波侵食耐性について検討した.相似則の課題はあるものの,海岸堤防の堤体材料に少量のセメントまたは粘土を混合することで堤防の津波侵食耐性が向上し,津波に対して粘り強さを発揮できる可能性が本実験から示された.さらに,砂盛土および粘土混合盛土を対象に流体・地盤連成解析による再現計算を実施し,数値解析により粘土を含む堤体の津波侵食耐性を評価できる可能性が示された.