2016 年 72 巻 2 号 p. I_109-I_114
深海域に囲まれた特有な地形条件を有する海洋上の離島港湾では,波はほぼ全方位から来襲する.本研究では,沖縄本島の東約360kmの海洋上に位置する南北大東港に対して波浪推算及び波浪変形計算を行い,各岸壁に対する確率沖波及び作用波を効率的に算定する手法を示すとともに,その妥当性を海岸近傍で取得された擾乱時の波浪観測記録を用いて検証した.
波浪推算においては海洋上の孤島を敢えて海域とみなすことにより,逆に全方位の沖波の算定が可能となる.また,スペクトル法とのone-wayカップリングが可能なブシネスクモデルは,島による波の回折やトラップ効果を考慮した各岸壁への作用波だけでなく,岸壁上の越波浸水過程なども効率的に算定可能であるが,推算波を入力した沿岸波の再現計算では観測波高を過小評価する傾向がみられた.