2016 年 72 巻 2 号 p. I_1621-I_1626
本稿では,岩手県沿岸に存在する176基の津波碑を対象に,過去の津波の浸水域と津波碑の位置関係を整理し,さらに東日本大震災を事例に,人的被害の軽減効果について検討した.その結果,4つの結論が得られた; 1)岩手県沿岸の津波碑のうち3.11津波の浸水を免れたものが約75%あり,これらは津波避難の際の目標地点としての機能を期待できる.2)明治三陸津波および3.11津波の浸水域内に位置している昭和三陸津波碑には,建立の際に明治三陸津波の影響を考慮していれば,3.11津波の浸水を免れた可能性のある碑も存在する.3)津波の浸水域外に津波碑が存在する地域ほど,津波ハザードに対して人的被害がやや軽減された傾向にある.4)教訓型津波碑の中には,過去に津波が浸水したエリアを避難地点に指定しているものもあり,人的被害を拡大させる恐れがある.