2016 年 72 巻 2 号 p. I_1627-I_1632
津波による人的被害の想定に関する研究は数多く行われてきたが,市町村単位や,大字単位での犠牲者率算定に基づく分析が主である.しかし,そうした分析スケールでは,小地域ごとに異なる被害の特徴を十分に捉えることができておらず,現状では将来の被害想定を行える手法の確立には至っていない.そこで本研究では,東日本大震災において最大の人的被害が発生した石巻市を対象に,人的被害と浸水深及び建物被害との関係に着目し,町丁目ごとの詳細な空間スケールで統計的な分析を行った.その結果,石巻市では,犠牲者率と浸水深および建物被害率との関係にそれぞれ高い相関があるという特徴的な被害が発生していたことがわかった.この分析結果をもとに津波による人的被害に影響する要因を整理し,浸水深や建物被害率で人的被害を説明する統計モデルを構築した.