2016 年 72 巻 2 号 p. I_511-I_516
海洋を対象とした波浪や流れおよび塩熱環境の再解析には,数値モデルの構築において対象スケールに適した物理素過程を考慮することが重要である.実際の波浪場は風波やうねりの共存する不規則波浪場であるが,沿岸域において,その重要性のわりに不規則波による波・流れ相互作用はあまり考慮されてこなかった.本研究では,砕波帯外の海域で波・流れに及ぼす影響として重要な不規則波浪場のStokes driftについて領域スケールの海洋・波浪結合モデルに考慮した.構築した結合モデルを用いて和歌山県田辺湾を対象とした沿岸流の解析を行い,既存のモデルの計算結果と比較を行った.単一の海洋モデルおよび規則波に対するStokes driftを考慮した結合モデルでは,Stokes driftを全体的に過大評価傾向にあったが,本結合モデルではStokes driftの平均流への30%程度の影響があることを明らかにした.