2017 年 73 巻 1 号 p. 19-32
津波来襲時に河川を遡上する津波に伴い塩水が河道内に浸入すると,河川から取水している浄水場においては高濃度の塩水の混入を防ぐために取水停止を余儀なくされ,災害時に水道水の供給に支障をきたす可能性がある.本研究では,津波来襲時の河道内の塩水挙動を数値解析により予測することを目的として,特定の領域の三次元塩水挙動解析と広域の平面二次元津波伝播解析を同時に実施できる広域津波連動型河道内塩水挙動解析モデルを開発した.この解析モデルを具体的に南海トラフ巨大地震津波来襲時の淀川大堰周辺域における塩水挙動解析に適用したところ,様々な河川流量下での河道内の塩水の空間分布や時間変化を定量的に予測し,塩水による取水への影響を評価することができた.さらに,取水への影響を軽減できる対策案を得た.