2017 年 73 巻 2 号 p. I_109-I_114
うねりの方向スペクトルは海岸過程の外力として重要であるが,観測・解析上の困難から十分に研究がなされていない.本研究では,東北~関東の太平洋岸の観測点5地点で1年間観測された波浪データをもとに,安定なうねりを抽出してその方向スペクトルの形状特性および相似形について検討を行った.風波とうねりの分離結果の妥当性は風波の3/2乗則によって確認した.観測されたうねりの方向スペクトルはピーク付近にエネルギーが集中・孤立し,従来の標準形では十分に表現できない特異な形状を示したが,修正した標準形を用いてうねりの方向スペクトル形状の表現を試みた.最後に,波齢や波形勾配は観測地点周辺の局所的な気象場や波浪場の情報しか含んでいないため,遠方の波源から供給されるうねりの方向スペクトルの形状を決定する因子としては不十分である可能性を示した.