2017 年 73 巻 2 号 p. I_1249-I_1254
沿岸域における赤潮等の短期的に変動する水質変動のさらなる解明を目指し,栄養塩の新たな観測手法として,水中設置型の分光光度計による連続現地観測を試みた.最初に,室内試験により精度検証を行い,栄養塩変動を観測する上で十分な精度を得られることを確認した後,大阪湾湾奥部の2地点で7~10日間の栄養塩連続観測を実施した.他の水質項目等の連続観測結果と比較した結果,港内での観測において吹送流の発生による底層水の湧昇など,水塊の移動に伴う栄養塩変動が観測された.また沖合においては日周期的な濃度変化があり,機器の固定設置に伴う水深の変化,潮流による水塊の移動に加えて,植物プランクトンの光合成による栄養塩の減少が認められた.ただし,それぞれの影響を個別に定量するにはさらに長期の観測が必要であると言える.