2017 年 73 巻 2 号 p. I_133-I_138
南太平洋の島嶼国はサイクロンに起因する沿岸ハザードに晒されているものの,比較的小規模な国土や,リーフや周辺島嶼による複雑な海岸形状の影響もあり,各地域のハザードを観測データや災害履歴のみから推定するのは困難である.本研究では確率台風モデルを適用し,フィジーやバヌアツにおける沖波波高の統計的評価を試みた.まず低緯度帯に留まるサイクロンの特性を勘案し,経路の算定には自己回帰モデルと移動速度成分の変化量を確率分布から推定するモデルとを組み合わせ,また,中心気圧の算定には発達項と減衰項を分離して自己回帰モデルに適用するなどの改良を加えた.最後に妥当性を検証した確率台風モデルを南太平洋島嶼国に適用し,海岸線の方向や地形条件により異なる来襲波浪の特性を整理した.