2017 年 73 巻 2 号 p. I_1339-I_1344
宮城県北東部の志津川湾はカキ,ワカメ,ホタテガイ,ホヤ,ギンザケの養殖が盛んな海域であるが,東日本大震災の津波により養殖施設がほぼ全損し現在も復旧途上にある.本研究は,志津川湾で行われているこれらの養殖を考慮した数値モデルを構築し,震災前と現在の養殖形態の変化が,志津川湾で最も水揚げ量の多いカキの成長や水揚げ量,水質へ及ぼす影響等について解析を行った.その結果,カキ養殖筏の台数を震災前の1/3に削減したことでカキの身入りや成長を速め,筏1台当たりの水揚げ高が増加すること,海底へ沈降するカキ糞が減少することで海底付近での酸素消費が抑制され,底層DOが1mg/l以上改善することを実証した.また,ホタテガイ,ホヤについてはカキと餌が競合するため,カキ養殖筏を増やすことでその身入りが減少する可能性が示唆された.