2017 年 73 巻 2 号 p. I_367-I_372
巨大地震津波は低頻度のため情報が少なく,東北地方太平洋沖地震津波では想定の過小評価を招き,被害を拡大させる要因となった.被害想定の見直しに伴い詳細な既往津波の知見が求められており,多くの情報を有する津波堆積物が注目されている.しかし,その形成メカニズムが未解明のため,津波の定量的な評価や波源の推定には至っていない.本研究では津波堆積物の形成メカニズムを明らかにするため,粒径や外力を変化させて,斜面遡上に伴う堆積砂に関する水理実験を実施した.その結果,段波の大きさと波数によって堆積砂の到達距離や量が大きく変化した.混合砂による総堆積砂量は,混合比に関係なく外力に依存した堆積構造を示すが,汀線付近を構成している各粒径の分布比は混合比と高い一致率を示した.また遮蔽物や段波の周期などの条件による流況の変化が堆積物に大きな影響を及ぼすことを明らかにした.