2017 年 73 巻 2 号 p. I_85-I_90
粒径別粒子濃度に関する現場観測を行い,海底混合層変動や海底乱流過程と懸濁粒子動態の関連性解明に向けた考察を行った.観測結果からは海水密度成層条件下において海底混合層が形成され,粒径区分毎の粒子濃度が海底混合層の外側で顕著に減少する結果(特徴1),海水密度分布が一様で,粒径区分毎の粒子濃度が全水深にわたってほぼ一様となる結果(特徴2)が確認された.特徴1の場合の乱流エネルギー散逸率の平均値は,海底混合層の外側で粒子濃度が顕著に減少しない場合のそれを数倍程度上回った.本観測結果は既往の数値研究から得られた結果とも整合しており,海底混合層厚やその背景物理過程としての海底乱流過程の変動が懸濁粒子の濃度分布を決定する重要因子の一部であることが示唆された.