海洋鋼構造物では,海水による鋼材の腐食損傷と共に,海洋生物の付着による性能低下が問題となる場合がある.本実験では,Al-5%Mg合金,銅などの材料を用いた金属溶射や,重防食塗装などで被覆した試験体を護岸に設置し,延べ6年間にわたり海洋生物の付着防止や耐食性に関する暴露実験を行った.その結果,本実験の範囲内では2年を超えて付着防止効果がある被覆仕様は得られなかったが,Al-5%Mg合金や銅系金属溶射等の付着防止効果や耐食性などに関する知見が得られた.また,板厚の測定値から簡易的な手法で平均腐食速度を推定した結果,裸鋼材では飛沫帯の腐食速度が最も速く,次いで干満帯,海中部の傾向であった.Al-5%Mg合金溶射皮膜の腐食速度は,裸鋼材の1/3以下であり,飛沫帯や干満帯よりも海中部で腐食速度が速い傾向であった.