2018 年 74 巻 2 号 p. I_1141-I_1146
ツバル国フナフチ環礁ラグーン内における汚濁物質を想定した都市起源物質の輸送過程を海洋数値計算により明らかにした.ラグーン内では,吹送流によって上下層で異なる複雑な流動場が形成されていた.都市起源の物質のラグーン内の輸送フラックスから,夏季は卓越する北西からの風によりラグーン南側の環礁の切れ目から都市起源物質が強く流出していた.一方南東からの風が卓越する冬季は,ラグーン北側からの物質の流出が顕著に現れていた.汚濁物質のラグーン内残留量から,都市起源物質は冬季夏季ともに10日程度でラグーン外への排出が始まり,排出量は風況の強く影響を受けていた.また水質汚濁対策として,人工的にモデル内に新たな環礁の切れ目を設けることにより,冬季はラグーン内の都市起源物質量を9 %程度削減できる可能性が示唆された.