2018 年 74 巻 2 号 p. I_211-I_216
宮城県の仙台湾沿岸には,貞山運河,東名運河,北上運河が,阿武隈川から旧北上川まで約49 kmに亘り日本一の運河群として,今なお存在し続けている. この運河群は,東日本大震災の津波に対して一定の津波減災効果があったことが明らかになっている.また,運河が存在する阿武隈川から北側の方が運河のない南側よりも,海岸堤防の破堤箇所の数は少なく被害規模も小さかったことがわかっている.
そこで,運河が存在しない阿武隈川以南の亘理町及び山元町における亘理海岸及び山元海岸沿いに多重防御を担う施設として運河新設の可能性を,平面二次元津波解析により津波到達時間等の減衰効果ならびに最大浸水深と最大流速の平面分布等から評価した結果,運河新設は一定の津波減災効果を発揮し,津波対策における多重防御システムを整備する上で有効であることが明らかになった.