2018 年 74 巻 2 号 p. I_235-I_240
本研究では,沿岸平野部における海岸林の分布,地形諸条件,津波の水理諸元を考慮した,個々の建物の津波被災状況を定量評価する手法を提案した.定量評価手法の構築に際して,仙台平野域の宮城県5市町における,東日本大震災時の実被害データを用いた.対象地域では,おおよそ海岸林の林帯幅に応じて,構造種別毎の被災区分の軽減傾向を確認した.さらに,実被害データと津波数値解析より,海岸林の存在,建物立地点における津波外力,各建物の立地・地形勾配,津波外力の減衰率を表現する無次元変数を用いた定量評価式を構築し,その統計的妥当性を確認した.本手法により,評価対象とする建物構造や,海岸林の林帯幅,標高,津波水理諸元を求めることにより,他地域でも個々の建物被災程度を定量的に推定することが可能となる.