2018 年 74 巻 2 号 p. I_775-I_780
沿岸砂州の周期的沖向き移動に対応した汀線変動が見られる石川県北部加越海岸を対象に,砂州位置の変化と波の伝播・遡上特性との関係を解明するため,XBeachモデルにより波浪と長周期波の数値解析を行った.その結果,長周期波高が風波波高を上回る汀線付近において,砂州は長周期波を低減できることがわかった.砂州は波高1~2 m以上の侵食性の波の遡上を抑制し,波高0.6 m程度の堆積性の波の遡上を促進した.砂州の移動は汀線を平衡位置近傍で変動させ,汀線位置を安定化する働きが見られた.砂州位置の変化による波の遡上端の変動幅は約4~8 mと推定され,砂州位置の変化に伴う汀線位置の変動幅と一致した.これらの変動幅は汀線の季節的変動幅と同程度で,本海岸の沿岸砂州が汀線変化や波の遡上に与える影響は大きいことがわかった.