2019 年 75 巻 2 号 p. I_163-I_168
1991年にSamoa Faleoloを襲ったサイクロンValの事例について,複雑なリーフ形状が浸水特性に与える影響を明らかにすることを目的とした.現地調査を行い,リーフ海域の水位変動データを解析した結果,数分単位の特定の長周期成分の発達が確認された.続いて,外洋の波浪推算で求まったFaleoloの沖合における波浪条件を入力条件として,リーフ上での波・流れ場を数値モデルを用いて再現した.その結果,実際の浸水被害状況と矛盾しない結果が得られ,リーフ上での水位上昇にはリーフエッジでの砕波に伴うwave setupの影響が大きいことが確認された.またリーフ上での共振現象やリーフギャップにおける強い沖向き流れの影響により,長周期変動成分を含めた最大水位は沿岸方向に大きく変動し,局所的に増幅した水位が浸水特性に大きく影響を及ぼしていることが推察された.