2020 年 76 巻 2 号 p. I_1147-I_1152
瀬戸内海における一次生産・水質への気候変動影響を明らかにするため,陸域淡水・汚濁負荷流出-海域流動・水質・底質モデルを用いて,現在気候20世紀末とRCP8.5の将来気候21世紀末のそれぞれ20年間の予測計算を行った.RCP8.5の中でも最も昇温傾向が強い条件で予測された将来気候の表層水温は,現在気候と比べて,3~4℃程度上昇することが全湾灘で確認された.特に夏~秋の顕著な高水温は一次生産を大きく低下させると予測された.それに応じて夏~秋の表層DINは上昇するが,季節的に水温低下が進んだ10~11月に入ると,豊富な栄養塩に支持されて一次生産は強まる傾向が見られた.冬に入っても将来気候では,水温が現在気候より高いため,一次生産は高く維持され,表層DINは減少することが示された.