2020 年 76 巻 2 号 p. I_121-I_126
地球温暖化の進行により,将来気候下の日本列島に上陸する台風は「強大化」するだけでなく「低速化」すると指摘されている.先行研究により,温暖化により低速化した台風に伴う可能最大高潮は,伊勢湾の湾奥(名古屋港)よりも西岸域(津港)でより高くなるという常識とは異なる結果が示されている.本研究では,経験的台風モデルと高潮モデルを用いて,伊勢湾を模した理想的な地形を設定して高潮に関する感度実験を行い,伊勢湾西岸域における潮位上昇メカニズムを考察した.感度実験の結果より,1) 低速台風の北側の強い東風,2) 志摩半島の存在,3) 湾内の水深変化によって,伊勢湾内に正負の2つの渦度からなる双極渦が生成され,湾西岸で2つの流れが収束することで潮位上昇が生じることが明らかとなった.