2020 年 76 巻 2 号 p. I_295-I_300
各種構造物に作用する津波荷重の評価では,設計用浸水深の3倍に相当する静水圧(水深係数)が作用することを基本とし,周辺状況によりその倍率を低減させている.これまで建築物に作用する津波波圧や水深係数の低減に関わる水理模型実験や数値解析は数多く行われてきたものの,最大規模の想定津波による水深係数の空間分布やその確率的変動について,数値解析を用いて定量的に評価した研究はない.本研究では,首都圏に多大な影響を及ぼすと想定されている相模トラフ巨大地震津波を対象に,固有直交分解による空間モード分解を用いた評価手法を適用し,水深係数の空間的不確実性を評価した.結果,今回の事例では,水深係数の標準偏差は大きい地域で0.6前後であり,また,海岸からの直線距離が約1 km程度で0.5程度減少する傾向のあることが分かった.