2020 年 76 巻 2 号 p. I_31-I_36
流体構造連成問題すなわちFSI問題(Fluid-Structure Interaction)は様々な工学分野に遍在しており,こと海岸工学分野においては自由表面を伴う激流と海岸構造物とのFSI現象が主となる.本研究では,粒子法によるFSI研究の最新成果の一つである陰的完全Lagrange型構造体モデルの更なる改良を行った.既往の陰的構造体モデルの課題であった回転行列に関する非物理的な仮定に対し,予測子修正子法を参考にした二段階計算アルゴリズムを導入することでモデルの更なる高度化・安定化を実施した.構造体およびFSI問題のベンチマークテストを実施したが,構造体モデルの検証ではエネルギー保存性および角運動量保存性について提案アルゴリズムの導入による改善効果が確認され,高精度MPS法型流体モデルとのカップリングにより構築したFSIソルバ―の検証では提案手法の優れた計算安定性が示された.