2020 年 76 巻 2 号 p. I_55-I_60
2019年3月に博多湾奥の沿岸部で浸水被害が発生したという情報をきっかけとして,同時期を含む期間における潮位データの解析を通じて,同湾における副振動の発生とそれによる浸水被害の可能性を検討した.その結果,3月20日22時9分に天文潮位よりも最大20cmの水位上昇を記録しており,また潮位偏差の時系列データを対象としたスペクトル解析を通じて,博多湾において副振動が発生していたことを確認した.さらに,博多湾内の感潮河川における水位データについても解析した結果,湾内の副振動を原因とする30cm以上の水位上昇が生じていたことを確認した.したがって,大潮満潮と副振動の発生が重なった場合,博多湾沿岸部での浸水被害の発生の要因のひとつとして,湾内水の副振動にも十分に注意する必要があると結論付けた.