2020 年 76 巻 2 号 p. I_931-I_936
都市河川の大和川を対象に,上流から河口にかけて無機炭素(DIC)の分布調査を季節ごとに2年間実施し,河川水中のDICの変動特性を把握するとともに大和川からの炭素流出が河口沿岸部の炭素動態に及ぼす影響について検討した.DIC濃度は865~1,420mol/Lで変動し,流量の多い降雨後の出水時や夏季の増水時に低く,流量の少ない冬季に高くなる傾向が確認された.また,都市部の下流域ではDIC濃度の変動はほとんどないが,上流域は下水処理水や呼吸・分解の影響でDIC濃度が変動することが示唆された.一方,河口沿岸域に流出する全溶存炭素のうち約8割がDICで,平水時には約6,250haの塩性湿地が貯留するの炭素量に相当するDICが一日で流出していることが明らかとなった.さらに,他河川に比べて大和川河口域のDIC濃度は高いがCO2濃度は低いという特徴が確認された.