2021 年 77 巻 2 号 p. I_1081-I_1086
近年,気候変動の影響により,自然災害のリスクが増加すると予測されている.その中で津波災害においては,気候変動による海面上昇の影響を強く受けると考えられる.しかし,海面上昇が津波被害額に与える影響は明らかになっておらず,将来的な津波による被害額推定のために評価が必要である.本研究では,土地利用データと産業連関表を用いた経済モデルによって,海面上昇が日本海溝沿いの巨大地震モデルによる,東北地方の津波被害額に対して与える影響を推定した.現在および複数の海面上昇シナリオに対する津波ハザードおよび津波リスクを推定した結果,東北地方の総被害額は,1mの海面上昇により約46%増加することが分かった.さらに県別で分析した結果,青森・宮城が特に脆弱性が大きく,また産業別では農業部門の脆弱性が大きいことが明らかとなった.本研究の結果は,将来の津波に対する各地域や各産業における防災計画の策定に活かすことが期待できる.