2022 年 78 巻 2 号 p. I_361-I_366
本研究では,2011年3月11日に発生した東日本大震災発災後の人々の移動が危険方向であったか否かを評価し,危険方向移動者の割合やその特性を明らかにするため,岩手県・宮城県・福島県の3県を対象に発災後の移動行動を分析した.得られた結果は,主に次の通りである.1)分析対象者の3割以上が,発災後に一度でも危険方向へ移動していた.2)人に乗せてもらって移動した人は危険方向へ移動しない傾向があった.3)公務員・団体職員は発災後最初のトリップで危険方向へ移動する傾向があった.4)発災時に外出中であった人は危険方向へ移動する傾向があった.5)発災前の備えや事前に得ていた情報の中でも過去の浸水域や避難方向を示す標識を見たことがあることは危険方向移動を抑制する可能性が示唆された.