会計検査研究
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会計検査研究
地域医療情報連携ネットワーク政策における費用便益モデルの構築と試算
平井 里奈伊藤 敦大塚 良治丹野 忠晋櫻井 秀彦古田 精一岸本 桂子奥村 貴史
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2025 年 71 巻 p. 35-

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抄録

 2000 年代以降,国策として進められてきた医療情報化施策の一つである,地域医療情報連携ネットワークでは,医療機関間を情報ネットワークで接続することで,医療の質の向上に貢献するものと期待されてきた。しかし,多大な費用に見合う成果が得られず,運営が放棄される事態が繰り返されてきた。そこで,本研究では,「費用便益分析」の手法を援用し,「費用」と「便益」の定量化を通じた政策評価を試みる。

 まず,費用便益分析の標準手法に倣い,事業に関わる様々な費用と便益構造を整理した。事業にかかるあらゆる費用と得られる様々な便益を,金銭価値・非金銭価値の面から列挙したうえで,首都圏A 市のネットワーク事業者A と,A 市内の全医療機関に質問紙調査を実施し,仮想的市場評価法,支払い意思額等を組み合わせ,各費用と各便益を推計し,正味現在価値,費用便益比,患者一人当たりコストを算出した。

 事業2 年間の金銭的便益は1 億2178 万円,金銭的費用は1 億2061 万円であり,非金銭的便益は530.97万円,非金銭的費用は3695.95 万円であった。これらより,正味現在価値は-3047.97 万円,費用便益比は0.81,金銭的費用のみを対象として算出した患者一人当たりコストは7236 円/年となった。

 この結果は,事業が実施費用に見合うだけの便益を生み出せていないことを示し,今まで各地の地域医療情報連携ネットワークが構築されては運営が放棄される事態が続いてきた理由を定量的に説明する。

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