海の研究
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2015年度日本海洋学会賞受賞記念論文
海氷域の変動とその海洋循環に与える影響に関する研究
大島 慶一郎
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2018 年 27 巻 2 号 p. 75-96

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抄録

海洋の大規模な中深層循環・物質循環は,極域・海氷域での海氷生成による高密度水生成が起点になっている。全海洋の深層に広がる底層水が作られる南極海のような極海では,観測の困難さによって,海氷生成及び中深層水の形成・循環は十分わかってはいなかった。衛星マイクロ波放射計データによる薄氷厚アルゴリズムが開発され,熱収支計算を組み合わせることで海氷生産量を見積もる手法が考案された。南大洋の海氷生産量マッピングからは,ロス海に次ぐ第2 の海氷生産量域が東南極のケープダンレー沖にあることが示され,ここが未知(第4)の南極底層水生成域であることが,直接観測から明らかになった。北半球最大の海氷生産量域は,オホーツク海北西ポリニヤであることが示され,ここを起点として北太平洋の中層まで及ぶオーバーターンが形成されることに対応する。西岸境界流である東樺太海流はこのポリニヤで形成される高密度陸棚水を南方へ運ぶ役割を持つ。この50 年のオホーツク海風上域での温暖化が,海氷生産の減少とそれに伴う高密度水減少をもたらし,北太平洋のオーバーターンを弱化させていることも示唆された。これらの研究により,海氷生産量と中深層水の形成・変動に強い関係があることが定量性をもって明らかになってきた。

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© 2018 日本海洋学会
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