付着生物にとっての着定基質構造の評価を行う一環として,産業重要種であるマガキ Crassostrea gigas 幼生採苗器(カキ幼生コレクター)の表面粗さの定量化を,光沢度を用いて試みた。その結果,カキ幼生コレクターの表面では光沢度が3.6 以下で幼生は24 個体/cm2 以上,裏面中心部では光沢度が8.6 以上で幼生は10 個体/cm2 以下となり,カキ幼生コレクターの部位毎の光沢度及びマガキ幼生の付着数には有意な相関が認められた。次に,紙やすりを用いて光沢度の値を凹凸の粗さに対応させることを試みた。その結果,紙やすりの粒径と光沢度は,決定係数が低いものの有意な相関が認められた。また,0.25 mm以上の凹凸では光沢度が測定出来ないことも明らかとなった。表面粗さの定量化については今後もさらなる詳細且つ多様な解析が必要であるが,本研究結果からは,カキ稚貝の密度が最も高くなる基質表面の粗さとそれを示す光沢度を解明できる可能性が示された。これらの成果を応用することで,将来的にカキ幼生の採苗密度の向上が期待できる