日本海洋学会誌
Online ISSN : 2186-3113
Print ISSN : 0029-8131
ISSN-L : 0029-8131
日本列島対馬暖流域におけるハリセンボンの“寄り”現象について-III
“寄り”の生態学
西村 三郎
著者情報
ジャーナル フリー

1958 年 14 巻 3 号 p. 103-107

詳細
抄録

1) 日本列島対馬暖流域,とくに本州・九州の日本海岸において冬の候特異的にみられるハリセンボンの集団的な接岸・来游現象-いわゆる“寄り”について, それがおこる際の気象状態, ハリセンボンとともに接岸するほかの動物,“寄り”の量の経年的な変動などを調べた. 調査は質問法によつており,各地の漁業協同組合および漁業者からの回答に基いている.
2) まず,“寄り”の際の海面状態については, 北海道・本州・九州の西岸においては, シケあるいはシケのあとに寄ると報告してきたところが圧倒的に多く, また風向については, 北~西の時に寄るとしたところが多い.北海道太平洋岸・三陸沿岸はこれとは事情を異にしているようで,上のような明瞭な傾向はみられない.
3) ハリセンボンとともに接岸・来游するほかの動物(主として魚類)には,とくに変つたものはみられないが,熱帯・亜熱帯性種から温帯性種・寒帯性種にいたる各種のものを含んでいる.熱帯・亜熱帯性種は中部以南の海域に多く,寒帯性種は中部以北でみられる.
4) ハリセンボンの“寄り”あるいは出現の量的経年変化については,全域を通じてほゞ同様な波動的変化の傾向が認められ,近年においては,昭和28年および30~31年に多く,昭和25~26年,28~29年および32~33年には少なかつたようである.

著者関連情報
© 日本海洋学会
前の記事 次の記事
feedback
Top