日本海洋学会誌
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日本列島対馬暖流域におけるハリセンボンの“寄り”現象について-IV
“寄り”の機構に関する考察
西村 三郎
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1958 年 14 巻 3 号 p. 109-116

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抄録

1) 日本列島対馬暖流域におけるハリセンボンの移動=洞游,とくに本州および北九州の西岸において冬季顕著にみられる集団接岸現象, すなわち“寄り”の機構に関してひとつの仮説を提示した.
2) 九州南方の低緯度海域で発生したハリセンボンの稚・幼魚は黒潮および対馬暖流によつてはこばれて日本海に流入する. その時期は6~11月ごるであろう. 対馬・九州近海でみられるハリセンボン出現の夏のピークはこの流入する北上群に由来するものであろうと考えられる.
3) 日本海に入つた魚群は暖流主流軸に沿つてはるか沖合を北上するためにあまり眼につかないが, 暖流は本州北端において沿岸に収歛するので, 津軽海峡近海ではふたゝびこの北上群が認められるようになる. 魚群の一部は海峡を通過して太平洋に出, 一部は陸奥湾内に流入し, 一部は北海道西岸を北上する. この分派の割合は季節によつて異なるであろう.
4) になつて,北西季節風が卓越するようになると,それによつてひきおこされた優勢な吹送流によつて,夏の間日本海の沖合部に滞留していた,あるいはそこを通過中のハリセンボン群は南~南西方向に押しながされて本州沿岸部に達し, シケのときには浜辺にうちあげられたり, 沿岸の定置網などにのつたりして, いわゆる“寄り”現象を呈するのであろう. この南下群の一部はさらに本州に沿つて押しながされて北九州の沿岸に達し, こゝにも“寄り”を生起せしめるのであると考えられる.

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