1995年6月に八丈島南方海域において,曳航式CTD(アクアシャトル)を用いて黒潮フロント域の断面構造を観測した。観測した黒潮フロントの幅は約5km,水温勾配は1.2℃km<-1>であった。黒潮内側域のフロントには,その付近の海域に存在しない幅約5kmの低塩分水が40m深にまで達していた。その低塩分水塊のクロロフィル濃度が低いことから,栄養塩が枯渇した沿岸水あるいは表層水が降雨によって,希釈されたものであると考えた。さらに,黒潮外側域のフロントにおいても低塩分水塊を発見した。黒潮流路上の屋久島等で低塩分水を形成する十分な降水が記録されていることから,黒潮外側域の低塩水は降水によるものと判断した。