化学工学論文集
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エネルギー
蒸気圧縮式冷凍機と13°C潜熱蓄熱材の組み合わせによる空調冷熱の高効率生成
日高 秀人垣内 博行窪田 光宏渡辺 藤雄松田 仁樹
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2007 年 33 巻 5 号 p. 476-482

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抄録

空調用の冷熱生成のための電力消費の平準化および高効率冷熱生成を目的として,融点13°C潜熱蓄熱材(PCM13)と蒸気圧縮式冷凍機(VCRM, Vapor Compression Refrigerating Machine)を組み合わせたシステムを提案した.本提案システムにおいては,夜間にVCRMを冷熱源として稼動させPCM13を凝固させて蓄熱を行い,昼間に冷熱を蓄熱槽から放熱させVCRMの凝縮器を冷却しながら成績係数(COP, Coefficient of Performance)が高い条件でVCRMを冷熱源として稼動させて負荷に冷熱を供給する.VCRMはハイドロフルオロカーボン系冷媒R134aのp-h線図に基づくCOPで冷熱を生成するものとし,東京における夏季の外気温度データを用い,熱交換器での冷媒とPCMの温度差を5°Cとし,事務所(標準型)と住宅の2ケースを冷熱負荷として想定し,既存の氷蓄熱に対して提案システムの導入による圧縮機の必要動力の低減効果を算出した.
その結果,提案システムの導入により,既存の氷蓄熱よりも事務所(標準型)で13%,住宅で11 %の必要動力を低減しながら5°Cの冷熱が供給可能であることが明らかとなった.事務所(標準型)は昼間にしか負荷がないため,夜間にも負荷が存在する住宅より,低減効果が大きかった.氷蓄熱システムのPCMを氷からPCM13に置き換えたシステムの既存の氷蓄熱に対する必要動力の低減効果は,事務所(標準型)で47%,住宅で49%であると見積もられたが,冷房用途として利用するには,冷熱の供給温度が18°Cであるため,室内機の熱交換器の伝熱面積が増え,冷却除湿が不十分となりASHRAEの快適線図(ASHRAE, 1997)の快適な湿度範囲外となる.

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© 2007 公益社団法人 化学工学会
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