抄録
地球温暖化の主要な原因の一つになっている火力発電所からの排ガスに含有されるCO2を,ハニカム型ゼオライトを充填した回転式吸着塔を用いたTSA方式で除去・濃縮するシステムについてシミュレーションによる最適化方法の検討を行った.本研究では,最適化のために拡張Lagrange関数法を適用し,5個の操作条件の最適値の推算を行った.
この推算手法により,一例として70000 m3 (STP)·h−1の排ガスを対象に,CO2回収率が60%,回収CO2濃度が約90%でかつ所要エネルギーを最少にするような最適操作条件の探索を行った.各操作条件としては異なる3とおりの初期値を設定して計算を行ったが,いずれの条件でも5つの操作条件すべてで同一の最適値が得られることを確認した.この最適操作条件では,CO2 1 kgを回収するための加熱量と送風機動力を加味した所要エネルギーは,835 kJ疚g−1, CO2回収率は60%および回収CO2濃度は93%であった.この所要エネルギーは,前報で算出した最適値よりもさらに5%程度低減されており,本手法による最適化の有用性が確認できた.
また前報までの検討結果よりパージ工程を省略したシステムのほうがより高い回収性能がえられる可能性があったが,システムを変更して本手法により最適化を行った結果,従来のパージ工程を設置したシステムが高性能であることを確認した.