2014 年 40 巻 4 号 p. 306-312
現在,工場排ガスに含まれる低濃度の揮発性有機化合物(VOC)の除去用にポリアクリルアミド両性電解質(APA)水溶液噴霧技術が注目されている.従来,液滴径の小さい二流体スプレーノズルによる噴霧が一般的であるが,圧縮空気を使うためランニングコストが高くなり,一定量以上の排ガス量を持つ施設にしか適用できない.そこで本研究では,圧縮空気を使わない一流体ノズルを用いたコンパクトなVOC除去システムを構築することを目的として,APAの基本特性を調べたうえで,従来使用されている二流体ノズルの性能と比較して検討を行った.その結果,試料空気のバブリングによりAPA水溶液の基本特性を調べたところ,粘度測定から温度によりAPAの構造が変化することが示唆された.次に,スプレーノズルを用いた除去性能評価では,二流体ノズルは一流体ノズルに比べて,約3倍除去性能が高いことがわかった.そこで,一流体ノズルに静電スプレー(ES)法と変調電磁場(MEF)法を適用したところ,ES法では最大1.6倍増加し,MEF法では高風速条件で二流体ノズルにほぼ匹敵する性能まで向上した.この要因として,ES法ではAPAを含んだ液滴が微粒化されることでAPAが液滴表面に露出する割合が高くなることに起因すると考えられる.一方,MEF法ではAPA分子の凝集状態が緩和されて外表面に露出するAPAの割合が多くなることによると考えられる.