2014 年 40 巻 4 号 p. 320-326
固体高分子形燃料電池(PEFC)の高性能化に向けて解決すべき課題は多く,その一つにカソード流路内部が液水で閉塞され,酸素の供給阻害および圧力損失の増大を招く「プラッギング現象」がある.流路内の液水輸送には流路構造や壁面濡れ性が大きく影響するため,プラッギング現象を抑制するにはこれらを最適に設計することが重要となる.そこで本研究では,流路構造と壁面濡れ性の異なる可視化セルを用いて,発電状態でのPEFCカソード流路内の液水挙動の可視化観察を行った.さらに,カソード流路内の差圧およびセルの電圧特性も同時に測定し,プラッギング現象抑制のための有効な条件について検討した.その結果,サーペンタイン形流路の場合,流路壁面に親水・撥水いずれの処理を施した場合も未処理の場合と比べてプラッギング現象は軽減されることがわかった.一方,パラレル形流路において,流路壁面が親水性の場合はプラッギング現象は抑制されるが,撥水性の場合では流路内を閉塞した液水は効果的に外部へ排出されず,電池性能が悪化することが示された.