2015 年 41 巻 2 号 p. 121-130
本研究は,ナノ流体の一つであるカーボンナノチューブ分散流体の熱物性を評価し,その熱輸送プロセスとしての水平密閉矩形容器内自然対流の伝熱特性を実験的に検討したものである.ここでは,これまで著者らが構築した信頼性の高い熱物性計測システムを援用しながらカーボンナノチューブ分散流体の熱物性値とその温度依存性を定量的に同定するとともに,未解明な自然対流による熱輸送機構について考察を進めた.同時に,カーボンナノチューブ分散流体の流動特性についても熱的な観点から考察した.その結果,カーボンナノチューブ分散流体の熱物性値やその温度依存性を同定するとともに,本研究で使用したカーボンナノチューブ分散流体が非ビンガム流体であることを提示した.また,カーボンナノチューブ分散流体は,高い熱伝導性を示す流体であるが,高粘性効果により対流が抑制され,その結果として自然対流の熱伝達率が劣化することを明らかにした.