化学工学論文集
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反応工学
非平衡プラズマジェットCVD法によるシリコン製膜時に装置内圧力が製膜速度,膜質におよぼす影響
西田 哲納土 亮牟田 浩司栗林 志頭眞
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2015 年 41 巻 2 号 p. 148-152

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抄録

近年開発された非平衡プラズマジェット化学蒸着(Chemical Vapor Deposition, CVD)法は通常の非平衡プラズマCVD法に比べおよそ1000倍の速さで製膜を行うことができる手法である.本手法では高速噴流を用いることにより高速製膜を実現しているが,その要因としては高速噴流により基板近傍での物質移動が促進されるためと考えられている.また,噴流の速度が速いため主噴流内では原料ガスの分解があまり進行しない.そのため噴流が基板に衝突後,装置内での滞留中に原料ガスの分解が進み生成した製膜前駆体が再度主噴流に巻き込まれ基板に到達し製膜が起こることが示唆されている.本研究では装置内圧力が製膜速度に与える影響を確認するため,非平衡プラズマジェットCVD法によるシラン/水素系での製膜実験において装置内圧力を133から800 Paの間で変化させた実験を行った.実験の結果,267 Pa以下の低圧側では高速製膜現象は起こらず,装置内圧力の増加に伴い製膜速度が上昇することが確認された.またラマン分光法により得られた膜の結晶性を測定したところ267 Pa付近で結晶性が増加することがわかった.クヌーセン数により流れの状態を評価し,CHEMKINによる反応計算で製膜前駆体濃度の圧力依存性の推定を行ったところ,圧力変化に伴い装置内のガス流れが遷移流となったためガス流速が低下していること,それに伴い基板近傍の物質移動速度が低下し製膜速度が減少した可能性が示唆された.また,結晶性に影響がある製膜前駆体のSiH2濃度の推算から流速低下により反応がより進行し,原料ガスの分解が進行したことと圧力低下によりSiH3の濃度が低下しSiH2の濃度が増加したため結晶性が変化した可能性が示唆された.

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© 2015 公益社団法人 化学工学会
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