化学工学論文集
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[特集]未来を担う環境化学工学
磁選による使用済みリチウムイオン電池からのコバルト回収に適した加熱条件の検討
堀内 健吾松岡 光昭所 千晴 大和田 秀二薄井 正治郎
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2017 年 43 巻 4 号 p. 213-218

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抄録

近年,自動車や電気電子産業で需要が増加しているリチウムイオン電池(LIB)の正極材にはコバルト(Co)等の有用金属が多く用いられていることから,リサイクルプロセスの確立が求められている.物理選別と湿式処理の組み合わせは,使用済みLIBからのCo回収に有用な手段の1つであるが,同様に正極材に大量に共存するアルミニウム(Al)は忌避元素の1つとして知られている.そこで本研究では最前段である加熱操作に着目し,後段の磁選における高効率なCo回収とAl成分との相互分離に適した加熱条件を検討した.使用済みLIB内の正極活物質LiCoO2はLiが欠損したLixCoO2x<1)の形態となっており,Al粒子やC粒子との共存,ならびに加熱時に発生するCO2の他,COやCH4, C2H4などの還元性の気体によって,加熱による分解が促進され,磁性を有するCoO相やCo相が生成しやすいことがわかった.また,加熱時の昇温速度を遅くすることでCoO相やCo相の粒成長を促し,Al成分の粉化を防ぐことが確認された.その結果,使用済みLIBから75.5%の回収率でCo成分をAl成分と相互分離することに成功した.

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© 2017 公益社団法人化学工学会
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