化学工学論文集
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[特集]未来を担う環境化学工学
下水に含まれる繊維状物を用いた嫌気性消化汚泥の脱水性向上
杤岡 英司 山下 学碓井 次郎細川 恒寺田 昭彦細見 正明
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2017 年 43 巻 4 号 p. 238-244

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抄録

本研究の目的は,最初沈殿池汚泥から回収した繊維状物を脱水助材として利用した際の脱水性能におよぼす影響について明らかにすることである.嫌気性消化汚泥を対象として,定圧濾過実験と実規模のスクリュープレス脱水機による脱水実験の2種類の実験を行った.定圧濾過実験では,この回収した繊維状物を添加することで濾過速度は増大し,平均濾過比抵抗は低下することが確認された.これらの効果は,繊維状物の添加率を増加させることで,より高まることが明らかとなった.スクリュープレス脱水機を用いた実規模の脱水実験においては,最初沈殿池汚泥から回収した繊維状物を添加することで脱水ケーキの含水率は82から68%まで低下した.また,年間を通して繊維状物の添加率を増加することで脱水ケーキ含水率が低下する関係は一つの曲線で表現できた.このことから,繊維状物の添加率を調整することで脱水ケーキ含水率を任意に操作することが可能と推察できる.さらに,繊維状物の添加により汚泥処理速度,高分子凝集剤添加率の低減効果の改善も確認された.これらの結果は,下水に含まれる繊維状物が脱水助材となることを示唆している.

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© 2017 公益社団法人化学工学会
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