化学工学論文集
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環境
腐植の程度が異なる腐葉土由来の土壌フミン酸のカルシウム共存下の銅との吸着作用と2,4-ジクロロフェノキシ酢酸ジメチルアミンとの吸着作用の変化
庄司 良 牧野 春香
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2017 年 43 巻 5 号 p. 358-366

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抄録

フミン酸は動植物遺体が加水分解などの化学的作用を受けて生成される不定形の有機物である.フミン酸が生成される際の周辺環境の違いによってその性質が変化することはわかっている.しかし,フミン酸は有機物であるために微生物によってさらに分解され,フミン酸の性質が時間と共に変化していく可能性がある.本研究では山梨県大月市の一定箇所から定期に腐葉土を採取してフミン酸を抽出し,腐植時間が異なるフミン酸の性質調査を行った.フミン酸のカルボキシル基やフェノール基から放出される水素イオン量(交換性プロトン容量)および銅イオンとの結合性を酸塩基滴定,銅滴定およびカルシウム共存下銅滴定によって得られたデータをNICA-Donnan modelを用いて解析した結果,交換性プロトン容量は与えられた環境下の気温の積算が増加するごとに増加していった.また,銅イオン結合性は銅イオンと競合するようなカルシウムイオンが存在しない時は腐植時間との関係性が見いだせなかったもの,カルシウム共存下の場合は腐植時間が経過するごとに低濃度の銅イオンの吸着量が増加していった.このことからカルシウムイオンの吸着によってフミン酸の立体構造や配位数が変化する可能性や,銅イオンとカルシウムイオンの競合作用が小さくなることが考えられる.また,フミン酸の2,4-ジクロロフェノキシ酢酸ジメチルアミンとの結合性を検討した結果,2,4-ジクロロフェノキシ酢酸ジメチルアミンの吸着はFreundlich型吸着等温線に当てはめることができ,腐植時間経過ごとに係数が減少,定数が増加していく傾向が見られた.したがって,腐植時間が経過するごとに低濃度の2,4-ジクロロフェノキシ酢酸ジメチルアミンを吸着しやすくなっていくと考えられる.

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© 2017 公益社団法人化学工学会
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