化学工学論文集
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分離工学
破砕汚泥の沈降促進におよぼす塩添加効果
入谷 英司 片桐 誠之湊 純平西川 匡子
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2017 年 43 巻 5 号 p. 327-335

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抄録

活性汚泥への超音波照射と塩添加による協奏凝集効果を明らかにするため,超音波照射汚泥への添加無機塩のカチオン価数と濃度が,その回分重力沈降挙動におよぼす影響を調べた.その結果,Ca2+やMg2+の二価カチオンが超音波処理汚泥の沈降特性の改善に最も効果的であることが明らかとなった.たとえば,Ca2+のわずかな添加においても高い見掛け密度をもつ極めて大きなフロックが形成され,それが沈降性能を向上させた.10 mMのCa2+濃度で沈降初期の定速沈降期間における沈降速度は,未処理汚泥の40.4倍を示し,300 min後の沈殿率も23ポイント減じた.Mg2+の添加も同様の傾向を示すことから,これらの結果がCa2+に特異的なアルギン酸とのエッグボックス構造の形成として知られるゲル化によるものではなく,超音波破砕により微生物細胞の内部から放出された細胞内代謝ポリマー間への二価カチオンの非特異的架橋作用による凝集が生じたものと推察する.Na+やK+の一価カチオンでは,添加濃度の増加とともに超音波照射汚泥の定速沈降速度は増大したが,Fe3+やAl3+の三価カチオンの添加では,沈降性能はほとんど向上しなかった.一方,超音波を照射しない汚泥に対しては,三価カチオンの添加が最も効果的であった.超音波照射汚泥に対して,三価カチオンの効果がほとんど見られないのは,三価カチオンを介しての代謝ポリマー間の立体障害作用に負うところが大きいものと考えられる.また,未処理汚泥に対するカチオン添加の結果は,DLVO理論に基づく電気二重層の圧縮によって説明できるSchulze–Hardy則と傾向的に一致している.

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© 2017 公益社団法人化学工学会
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