化学工学論文集
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[特集]実践晶析技術の進展
ニッケル・コバルト水和塩混合融液からの共晶形成
渡邉 裕之 平沢 泉
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2018 年 44 巻 1 号 p. 3-11

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抄録

共晶法は,潜熱蓄熱材の融点を調整してその適用温度範囲を広げる有効な手法の一つである.水和塩混合系における共晶組成の必然性を明らかにするため,硝酸ニッケル6水塩–塩化コバルト6水塩ならびに塩化ニッケル6水塩–硝酸コバルト6水塩の二成分混合系2種について擬二成分相図を作成した.加熱曲線から決定された各水和塩の融点は,それぞれ順に53.5, 53, 51.5そして53.5°Cであった.また両相図とも単純共晶型で,等モル混合で生成した共晶の融点は共に同じ30°Cであった.混合系の結晶組成は混合比率に対応して変化したが,混合前の当初6水塩には帰属されない新たな結晶相も晶析し,その比率は共晶組成において最大となった.生成した各共晶の粉末X線回折パターンは一致しており,両者は同一結晶組成にあることがわかった.解離イオンの等価的交換による共晶形成機構が提案された.また,すべての解離イオンに対して対イオンが相互に等価的数量関係を維持し得る混合比率が,共晶組成であることが示唆された.

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© 2018 公益社団法人化学工学会
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