ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)に光酸発生剤とメチルオレンジを担持させて作製した紫外線を照射すると変色する光応答型トレーサーを用いて,粉体の乾式光反応装置の性能評価を行った.流動層型反応器にトレーサーを充填して流動化させ,反応器側面から紫外線を照射して光反応を行った.反応器内のトレーサーの色をビデオカメラで撮影し,画像解析によりRGB値の緑成分の変化を連続的に検出できた.その変化速度から,流動層型反応器におけるトレーサーのみかけの光反応速度定数を決定した.次に,直径の異なる3種類の流動層型反応器を用いて,反応器に供給する空気の空塔速度,トレーサーの充填量,紫外線の照射強度を変化させた条件で,トレーサーの光反応を行った.十分に速い空塔速度では,光反応速度定数は,トレーサーの充填量1 kgあたりに単位時間に照射した紫外線エネルギーP[W/kg]に比例することがわかった.石英ガラスセルに充填したトレーサーに紫外線を照射して色の変化を解析した結果,粉体層中への紫外線の透過挙動がランベルト・ベールの法則にしたがうことを確認した.これらの結果をもとに,反応器内の光反応挙動が反応場と非反応場からなる単純な2相モデルで表現できることを示した.以上より,きわめて簡便な光応答型トレーサーを用いた乾式の光反応装置の性能評価法を確立した.本方法は,反応挙動を可視化できるため直感的にも理解し易く,粉体の乾式光反応装置の設計に有用である.