2020 年 46 巻 3 号 p. 77-83
フロー合成による化学合成プロセスが精密有機合成の分野で注目されている.実用的かつ高効率なフロー合成を実現するため,洗練されたフローシステムおよびよく設計された固定化触媒は強力な手段である.多孔質モノリスは,三次元的な貫通孔をもち大きな比表面積および高い透過性能を有する一塊の多孔質体である.本研究では,O-Acryloyl-trans-4-hydroxy-L-proline hydrochlorideを共重合したAcrylamide骨格の多孔質モノリスを作製し,その多孔性を評価した.また,作製したモノリスを不斉アルドール付加反応に応用し,その触媒活性について評価した.モノリスは,ポロゲンとして用いるアルコール(Ethanol, 1-Butanol, 1-Octanol, あるいは1-Dodecanol)により多孔質モノリスの細孔直径および比表面積を制御することができた.また,そのモノリスを用いてフローシステムを構築し,12 hの滞留時間においてフロー条件下で不斉アルドール付加反応を行った.すべてのモノリスは61–74%のeeでフロー不斉アルドール付加反応を達成した.これは,有機分子触媒L-Prolineを導入した多孔質高分子モノリスを用いて,フロー不斉合成を達成した初めての例である.