化学と教育
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人工臓器(化学への招待)
筏 義人
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1988 年 36 巻 6 号 p. 590-593

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抄録

人工腎臓の恩恵をうけている患者は, 我が国で, 現在, 約8万人にも達している。しかし, 急性呼吸不全患者のために, 1週間以上使用できる人工肺はまだ開発されていない。人工気管や人工食道も必要であるが, 臨床的に信頼して使えるものはまだ存在しない。このような人工臓器の開発の最大の障害となっているのは, 人工臓器の中心部をなす人工材料が生体にとって異物であることである。材料の生体代行性能, 強度, 耐久性なども不可欠であるが, このような力学的性質は, 高分子, 金属, セラミックスなどの材料化学の長足の進歩によって, かなり満足できる水準にまで達しつつある。ところが, 材料の異物性を低減させる研究は非常に遅れている。ここは, 化学こそが大いにその本領を発揮できる領域である。

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© 1988 公益社団法人 日本化学会
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