1992 年 40 巻 10 号 p. 675-679
パスツールによるぶどう酸(dl-酒石酸)のナトリウム・アンモニウム塩の分割に端を発した有機立体化学は, 化合物の真の姿を明らかにすると共にその機能を解明してきた。その結果自然の中のいろいろな興味深い現象の科学的な説明が可能となった。今日では立体化学を抜きにして化学を語ることはできない。今回は昆虫フェロモンなどを例にとり物質の立体化学がその働きといかに密接に関係しているかを述べる。またこれらの物質を合成して我々の生活に役立てるために不可欠な不斉合成化学についても触れる。