化学と教育
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三核亜鉛 (II) 錯体の自己集積による水溶性超分子カプセル(超分子の化学)
青木 伸木村 榮一
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2002 年 50 巻 2 号 p. 102-105

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抄録

分子の集積化と組織化によって生まれる, 分子一つ一つの性質を超えた物理的, 化学的, あるいは生物学的性質をもつ分子集積体を開発, 探究する学問が超分子化学である。本稿では, 三核亜鉛(II)錯体(Zn_3L)とシアヌル酸誘導体が水溶液中において可逆的に集積して生成する超分子について紹介する。Zn_3Lとシアヌル酸(CA)は中性pHで2対3サンドウィッチ型超分子を生成する。アルカリ性水溶液から4対4かご型超分子が晶出したが, 水溶液中ではその構造をとっていないと推察された。そこでCAの替わりにトリチオシアヌル酸(TCA)を用いたところ, 中性pHで4 : 4かご型超分子が生成することができた。その外形はねじれた立方八面体で表すことができ, 4つのベンゼン環と4つの1, 3, 5-トリアジン環に囲まれた内部空間は, ねじれ切頂四面体(twisted truncated tetrahedron)の形状をもつ。この内部空間には, ちょうど良いサイズと疎水性をもつ有機ゲスト分子が包接される。新しい機能性超分子として期待される。

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© 2002 公益社団法人 日本化学会
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