化学と教育
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石炭灰を用いた閉鎖性水域の環境の改善(ご当地の化学[兵庫県/近畿支部])
浅岡 聡
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2016 年 64 巻 1 号 p. 30-33

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抄録

閉鎖性水域において海底に堆積した底泥から発生する硫化物イオンは生物に有毒である。多くの閉鎖性水域では硫化物イオンによって広範囲にわたって生物が棲み難い環境になっている。底泥から発生する硫化物イオンを除去するため,石炭火力発電所で石炭を燃焼させる際に発生する石炭灰にセメントを混合し反応させた底質環境改善材料(石炭灰造粒物)を合成した。室内実験,閉鎖性水域を模擬した大型水槽を用いたセミフィールド試験,数値計算,実際の閉鎖性水域に石炭灰造粒物を施用した現場実証試験などから,石炭灰造粒物に含まれるマンガン酸化物が硫化物イオンを硫黄へと酸化し,かつ硫化物イオンの吸着サイトが再生するため,実際の現場において,長期にわたって硫化物イオンの低減効果が持続することが明らかになった。石炭灰造粒物は,日本国内で年間およそ1,300万トン発生する石炭灰を有効利用し,閉鎖性水域の環境改善を図ることができるため,サステーナブルマテリアルである。

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© 2016 公益社団法人 日本化学会
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